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<<   作成日時 : 2010/12/21 16:17  

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アリオス・・・
アリオス・・・
俺の名前を呼ぶのは誰だ?
アリオス・・・
アリオス・・・
違う。
俺はそんな名ではない。
もう呼ぶな。
なにも言うな。
俺は・・・、
俺はお前を欺いたのだ。
だから、もういい。
眠らせてくれ。
このまま永遠に。

たのむ
アンジェリーク。

  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

宇宙を統べる女王が、まだ17歳の少女だと知って驚いた。
そんな小娘の手に、この偉大なる宇宙の将来を委ねていいのかとさえ思った。
所詮、俺にとっては他人事だ。
小娘一人の采配で例え宇宙が傾こうとも、それはそれでおもしろいではないか。
興味があったのも、事実だ。
女王の統べる宇宙。
そして、聖地とはどんなところなのか。
一度見てみたいものだと思った。
そして、足を踏み入れたそこは天国のようだった。
華やかさがある。
人々に活気がある。
何よりもみんな幸せそうだった。
俺が遠い昔に忘れ去ってしまった純粋さを持っていた。
だからこそ、壊してしまいたかった。
全てを自分の色に塗り替えてしまいたかった。

俺はアリオスと言う、もう一人の人間になった。

  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

燃え盛る炎の中、助け出した少女はエリスにそっくりだった。
エリス・・・。
俺が愛した、ただ一人の女性だ。
まるで生き写しではないかと思うほどだった。
彼女の名はアンジェリーク。
天使と言う意味を持ち、宇宙を統べる女王と同じ名であった。
彼女もまた、新宇宙の女王だったのだ。
「ありがとう」と彼女に言われ、心の中がチクリと痛んだ。
これからこの先、だまし続けることも躊躇われた。
そう、それほどに・・・、
俺は彼女の中にエリスの影を追っていたのだ。

アンジェリークには、たくさんの仲間達がいた。
それは、俺が罠に陥れた守護聖だけではなく、いかにも胡散臭い商人や可愛らしい占い師、一国の皇子など、様々だった。
その誰もが、彼女に好意を寄せているようにも見えた。
いつも、どんな時でも、アンジェリークは守られていた。
実際、そうでもしないと危なっかしくて見ていられないほどだったのだ。
もちろん、俺もだ。
いや、
俺は演じていたのだ。
彼女を守る騎士(ナイト)を演じ続けていただけなのだ。

  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

オカリナをプレゼントされたのは、いつだっただろう?
恥ずかしそうに包みを差し出す彼女が、心底愛しかった。
子供の頃から、いつも俺は一人だった。
だからだろうか、淋しさを紛らわす術ならいくらでも知っていた。
特にオカリナは、荒んだ心を癒すには最適だった。
何か演奏してみせて・・・と言うアンジェリークの願いに俺は応えた。
名もない曲。
遠い故郷を思い浮かべて、即興で作ったのだ。
故郷にいい思い出一つない。
俺は、飛び出してきた身だ。
それでも、執着する何かがあるのだろうか。
帰りたいと、心のどこかで思う自分がいるのだ。
アンジェリークは泣いていた。
キレイな曲だけど、哀しいと言った。
そうか、
彼女も同じなのだ。
彼女がここにこうしているのは、何かを犠牲にして、そして代わりに新しい何かを得たからなのだ。
決して彼女の意思ではなく、選ばれたものに課せられた宿命なのだ。
肩を並べて座っていると、まるでエリスと一緒にいる錯覚に陥る。
俺はアンジェリークを愛しいと思うのに、やはりそこにエリスを重ねてしまうのだ。

そして俺は、エリスに似たこの少女を手にかけようとしていた。


  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

夜の海は好きかと聞くと、アンジェリークは困ったような顔をしていた。
誰だって一人で夜の海に放り出されたら怖いに決まっている。
それでも、強がりを言う彼女を意地らしいと思った。
エリスの影を引きずり戸惑いながら、アンジェリークと一緒にいることに心地よさを覚えていった。
いつしか、本当の目的すら忘れそうになっていく。
ずっと、こうしていられたら幸せだろう。
そんなことまで考える自分に呆れもした。
夜の海から見た空には、星が広がっていた。
素直にキレイだと思った。
隣にアンジェリークがいる・・・。
ただそれだけで、この星空がこんなにも輝かしいものになるのだと言うことを、俺は初めて知った。

「またいつか見ようね」とアンジェリークは微笑んだ。
またいつか・・・。

もうそんな日は・・・来ないのだ。

  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

皇帝レヴィアス。
俺の真の姿を知ったアンジェリークは、驚きと落胆の入り混じった顔をしていた。
憎んでほしかった。
騙し続けてきたのだから、それが当たり前だと思っていた。
なのに、彼女は優しい目で俺を見るのだ。
信じない、と。
何度も、戻ってきてくれと。
人を疑うことを知らないアンジェリークを、冷たく突き放すことなど簡単なはずだった。
しかし、それすらも出来ないほど、俺の心の中にアンジェリークが住み着いていたのだろうか。
最後の最後に迷う自分がいた。

この世のすべてから見放された。
築き上げてきたものが音を立てて崩れていった。
信じていたものにも裏切られた。
それでも、エリスがいた。
どんな時でもエリスがいてくれれば、それだけでよかった。
二人だけで生きていきたい。
そんなささやかな願いも打ち砕かれた。
俺には、この世の全てが敵だった。

誰からも必要とされたことなどなかった。
誰も必要ではなかった。
しかし、
こんな俺にも温かな手を差し伸べてくれる人がいるのだと思うと嬉しかった。
たとえ、同情だとしても・・・。
真っ直ぐに汚れのない澄んだ目で、共に生きようと言ってくれた。
もう、それだけで十分だ。

俺を呼ぶ声が聞こえていた。
どこまでも
どこまでも
その声は追いかけてくるのだ。
アリオス・・・
アリオス・・・
それは、切なるアンジェリークの声だった。

  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

もういいのだ。
お前が泣かなくてもいいのだ。
これこそが、
自分が最後に選んだ道なのだ。
だからもう、
悲しむのはやめてくれ。
アンジェリーク。
その名の通り、
お前は天使のようだった。
暗闇しかない俺の心に、
一筋の光を与えてくれたのだから・・・。
できることなら何もかも忘れて、
やり直せたらよかった。
きっと、
お前となら明るい未来が待っていたかもしれない。
けれど、
お前にはもっと大切なことがある。
出来たばかりの新しい宇宙。
これからそこに芽生えるだろう小さな生命。
お前は、
それを見守る女王なのだ。
もし・・・、
もし許されるなら、
今よりもっと、
清らかな心を持って、
生まれ変わりたいものだ。

アリオス・・・
アリオス・・・
ア・・・り・・・オ・・・ス・・・

ああ、
もうお前の声すら聞こえなくなってきた。
あとはもう、
静かな眠りにつくだけだ。
だからもう呼ぶな、
アンジェリーク。

  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

レヴィアス・・・?
レヴィアスなのね?
待っていたの。
ずっと、
待っていたのよ。
ごめんね、
淋しい思いをさせたのね。
でも、もう大丈夫。
私はここにいるわ。
レヴィアス・・・
レヴィアス・・・
早く来て・・・



わかってるよ。
長い間待たせたな、エリス


The End・・・

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